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 日本脳弾塑性学会においては「CRPS(RSD)は不全型と完全型に大別される」と定義しています。この両者の違いは理学所見のみでおおよその判断がつきますが、BReINに対する反応を見ることでその確度が高まります。完全型および精神疾患を合併している不全型はBReINに反応しません。

 ですが、基本的に不全型の多くがBReINによって改善します。以下に当院を受診されたCRPS(RSD)症例の一部をご紹介いたします。症例1)が完全型、症例2)以降はすべて不全型です。

症例1(完全型)…手首の捻挫(舟状骨骨折疑い)後に発症

 左手首の捻挫(舟状骨骨折疑い)後に発症したCRPS(RSD)完全型。上の写真は発症2週間後(左手全体に浮腫、発赤、皮膚光沢、皮線(しわ)の減少が見られる)。X線写真は左が患側(典型的なズディック骨萎縮)。

 下の写真は2ヶ月後(筋、皮膚、骨の委縮が顕著。手首から先のほとんどの関節に強固な拘縮)。廃用手に近い状態。BReINに反応せず、当方のカウンセリングによって失感情症の重症例であることが推断されました。

症例2(不全型)…猫による咬傷後に発症

 嫁姑問題が根底にあり自宅にいる時間を少しでも短くしたいという無意識に近い心理が働き、3つのパート勤務かけもちのほか習い事やカルチャースクール等々によって1週間のスケジュール表が完全に埋め尽くされていた症例です。
 
 「時としてケガや病気は命を守るためのブレーキ」という当方の「光の解釈カウンセリング」を受けて、自身のスケジュール管理を見直すと同時にBReINを続けることで早期の回復につながった事例です。

症例3(不全型)…外傷の既往なしに発症

 当院院長の母親に発症した重症CRPS(RSD)。発症の1年半前から同居していたこともあり、年単位におよぶ24時間密着の観察によってCRPS(RSD)発症メカニズムの解明につながった貴重な症例。
 
 脳が生み出す激痛-痛み回路の凄烈な過活動-はうつ病や認知症を回避するために脳が自ら行う自衛措置であるという視点が以前からあったが、図らずも院長の母親が身をもって立証…。

 感情のねじれ(本当はこうしたいのに、そうせざるを得ないという無意識に近い葛藤)は脳恒常性(ブレノスタシス)にダメージを与えて脳疲労を増悪させる。そしてこれが長期にわたるとうつ病や認知症のリスクが跳ね上がる。

 しかし患者さんが密かに抱える「感情のねじれ」を医療者が見抜くことは簡単ではない。自身の心の渕に潜む内実を言語化できる患者さんは極めて少数…。
 
 また失感情症の方は自身の気持ちの変化、感情の浮き沈み等を自覚することが苦手なため、脳と痛みの関係性を現実的に体感することがない。一般に夫婦喧嘩のあとで腰痛が出たら「なるほどそういうことか」と実感できるわけだが、失感情症の方はそもそも夫婦喧嘩にならない(しない)傾向が強く、自身の感情を開放する術を持たない。つまり「感情の乱れ➡心身の不調」という経験値がゼロに近い。そのため、痛みの発生メカニズム(メンタルの負担→脳疲労→痛み)を理解することは極めて困難。

 母はCRPS(RSD)重症例でありながら、およそ10カ月という信じられないほどの短期間で完治したが、その理由としてCRPS(RSD)の専門家たる息子、すなわち施術者と患者の関係が親子だったこと、そして極めて早期に診断治療を行うことができたためと推考される。

症例4(不全型)…足部の骨折後に発症

 症例4)は会社の吸収合併に伴い、本人が所属する部署の職員が次々に辞めていく中、自身も辞めたいと思っていたが、自宅を購入したばかりで決断できずにいる最中に発症。脳と痛みの関係を理解するに至り、CRPS(RSD)の現状を上司に粘り強く説明することで1か月の休職が認められ、その期間のほとんどを当方への通院に当てる。その後、紆余曲折を経て転職に成功。9か月後に完治。 

症例5(不全型)…足趾の骨折後に発症

症例2)と似たケース。ピアノや英会話等々のハードスケジュールの中、パート勤務先での人間関係のトラブルに巻き込まれ、抑うつとなる中で骨折。

 2軒目の整形外科医から「自分で努力しないとダメだよ、気力をふり絞って歩かないと治るわけない!と頭ごなしに怒鳴られて以来、夜間痛が増悪して不眠状態となる。CRPS(RSD)に対してあまりに無知な医療者による医原性CRPS(RSD)の典型例。BReINの継続により約1年後に完治。

症例6(不全型)…ふくらはぎの肉離れ後に発症

 高齢の登山愛好家に発生したCRPS(RSD)交感神経タイプ。終始一貫して痛みは些少であり、熱感とむくみだけが前景に立ち続けたケース。ひとり息子がひきこもりになっており、その息子とトラブルになるたび不整脈が現れていたが、当方のカウンセリングと施術によって回復。交感神経の機能異常(熱感やむくみ)も改善し、軽いハイキングができるまでに…。

 本症例はMCI(軽度認知障害)を合併していたが、これに関しても見事なまでの恢復を示した。BReINは脳に働きかける統合療法であり、認知症やMCIに対しても劇的な効果をもたらすケースがある。 

症例7(不全型)…手首の骨折後に発症

 本症例は「患部を見て人を見ない-木を見て森を見ず-」が招く悲劇の典型例。CRPS(RSD)に対するハードペイン(神経障害性疼痛)という思い込みがいかに患者さんの人生を狂わせるかを如実に物語る事例。

 本人のメンタルに極めて深刻なダメージをもたらす大事件-愛する独り娘から“いわれなき絶縁状”が突然送られてくるという衝撃的な出来事-の発生と、手術のタイミングがたまたま重なったために、自律神経の乱れ(交感神経の機能異常)が皮膚変化をもたらし…。これを神経癒着による症状と早計した執刀医による神経剥離術が、あろうことか三度も繰り返された結果、異常なほどの灼熱痛に襲われる地獄の日々が。

 そしてSCS(脊髄刺激療法)に救いを求め、電池内臓の装置を体内に埋め込むことに…。ところがトライアルのときは効果があったものの、いざ実際に体内に埋め込んでみると、その後は効果が現れず、「今では通電スイッチを入れることはほとんどないんです…」と。

 当方のカウンセリングによって、本症例は失感情症と失体感症を合併する発達個性(※)であることが判明。

※発達個性…「発達障害」に対しては障害として捉えるのではなく、あくまでも個性として認知すべき。脳における神経回路の発達に偏りがあるため、一芸に秀でる(天才的な能力を秘める)一方で、脳のエネルギーバランスが崩れやすいという特性を持つ。医療者やSEの中には発達個性の傾向を持つ者が多い。

 当方での2年以上にわたる粘り強いカウンセリングと施術の継続によって地獄の日々にようやく終止符が打たれた。以下がその実際の写真。

 本症例においては失感情症、失体感症ともに非出力タイプであり、失体感症のほうがより重度であった。

これまで生きてきて、疲労感というものを一度たりとも感じたことがない。CRPS(RSD)を発症するまで慢性痛の類(腰痛、頭痛、肩こりなど)も一切感じたことがなかった。お腹の調子を崩したこともない。胃痛、胃もたれ、腹痛といった経験は一度もない。口渇も感じないので、ふだん水を飲むことはない」

 と、典型的な脳疲労マスキング(疲労感なき疲労)の体質であり、突然死や過労死のハイリスクタイプであったが、CRPS(RSD)発症すなわち痛みという“感情解放”によって、脳疲労の回復が促され、結果として命が守られたという「光の解釈」が可能。




➡「痛みとは何か?-その深淵なる世界-」