2017年日本脳弾塑性学会(旧BFI研究会)による「脳疲労とタッチケア」と題された講演会が開かれて以来、そうした観点の重要性に気づいていただける方が徐々に増えております。

 その講演会に参加され、今も当院での脳疲労ケアを続けておられるA子さん(72歳女性)から、あるとき電話がありました。孫が体育の授業中、足首をケガしたので診て欲しいとのこと。

 さっそく来ていただくと、松葉杖をつきながら痛々しい姿で診察室に入ってこられました。すぐさま患部の状態を確認したところ、靭帯断裂のような重症ケースではなく、靭帯が伸びた(顕微鏡レベルでの微細な損傷とも表現できる)いわゆる中等症の捻挫でした。

 このレベルの捻挫ですと、痛みの個人差という次元から荷重歩行可能なケースと不能のケースに分かれます。日本脳弾塑性学会によれば、同じ程度のケガであっても、痛みの感受性に個人差があり、臨床所見は様々であるとされます。

 しかし痛みの個体差をまったく考慮しない医療機関においては、レントゲンやCTによる画像情報に100%依存した診断およびそれに基づく治療が行われるため、目に見えない問題が潜在します。その中の一つがメンタルの次元です。

 医療現場の多くは心身相関を完全に無視する構造因論のみに終始するため、痛みの管理(ペインマネジメント)に支障を来しているにも拘らず、これを患者さん自身の問題に責任転嫁するケースが非常に多い(例えば、いつまでも治らないのは患者さん側の努力不足だと喝破して、そもそも自身のペインマネジメントに問題があるという自己認識を持てない医療者…)。